英国紳士の身だしなみ
今回のお題は陛下のファッションです。
ウィンザー公というファッションリーダーの前には誰もが霞んでしまいますが、バーティも着るものに無頓着というわけではありませんでした。
父のジョージ5世はプロトコルに厳しく、当然、その場にふさわしい装いにもいちいち細かくて子供たちも身だしなみに気をつかうことになります。
バーティは保守的なので、式典以外のふだんの場面でも、正しくイギリス紳士の着こなしをしています。
服を選んだりスーツや制服のフィッティングをするために、テイラーを王宮に呼んで何時間も念入りに打ち合わせをしていたことから、スタイリングに気を遣っていたことが伺えます。
ロンドンにサヴィル・ロウという高級紳士服の店が並ぶことで有名な地区があります。
コリン・ファースがスパイ役の映画『キングスマン』もサヴィル・ロウの架空のお店が舞台でした。
映画『ウィンストン・チャーチル』(Darkest Hour)のエンドクレジットを見ると、チャーチルとジョージ6世の衣装は、サヴィル・ロウにあるヘンリープールが用意したと表記してあります。
素人目にも分かるベン・メンデルソーンにきれいにフィットしているスーツの素敵なこと。
ヘンリープールの日本語公式ページです。
創業が1806年と歴史は古く、顧客の方々も錚々たるお名前ばかり。
チャーチルもお得意様でした。
http://www.henrypoole-jp.com/index.html
Newsのバックナンバーでバーティのことに触れていました。
http://www.henrypoole-jp.com/news/contents/110228-kingsspeach.html
エドワード8世も、そしてジョージ6世もヘンリープールの顧客でした。ジョージ6世からヘンリープールに与えられたロイヤルワラントは、今もサヴィル・ロウ本店に飾られています。
これがロイヤルワラントに指定しましたよという通知。
1940年6月です。
Copyright (c) Henry Poole & Co
ロイヤルワラントとジョージ6世で検索すると「MEN'S Precious編集部」の記事が出てきます。
チャールズ皇太子のスタイルについての記事ですが、ジョージ6世のポリシーが分かる素敵な文章なので、こちらも一部引用させてもらいます。
真似するならチャーチルよりチャールズ。イギリスのプリンスこそお手本だ! | MEN'S Precious(メンズプレシャス)
ウィンザー公の弟であるジョージ6世が「extreme good quiet taste」─日本語に訳すと「極端なほどにささやかだけれど、雅趣に富んだよいテイスト」といったところか─を確立し、それは義理の息子であるエディンバラ公フィリップ王配と孫であるチャールズ王太子に影響を及ぼすこととなった。
1939年、英国はドイツに対して宣戦を布告したが、そのたった2年前に、ジョージ6世は突然王位を継承した。
2010年製作の映画『英国王のスピーチ』において、チェーンスモーカーで吃音に悩む姿が描かれたこの王は、第二次大戦において英雄的君主であることが証明された。
ロンドンから疎開することを拒んだ王は、擦り切れたスーツと、摩耗してボロボロになったカフス付きのシャツを身につけていた姿が目撃されている。
ジョージ6世は、大戦後の1944年に以前から顧客だった〝ベンソン&クレッグ〟に自身のロイヤルワラントを授けた。
サヴィル・ロウの老舗ではなく新参者にすぎなかった店が、王室の公式テーラーとなったのだ。
そして1952年に亡くなるまで、生涯、顧客であり続けた。そのスタイルは、実に慎ましやかで気どらないものだった。
以上、引用終わり
ベンソン&クレッグの公式サイトです。
こちらは文中にもあるようにサヴィル・ロウではなく、ジャーミンストリートにお店があります。
Benson & Clegg - Bespoke Tailoring London
カフリンクスの種類が豊富で有名。
日本円表示がありますが国外からも注文できるのでしょうか?
Our Historyには、陛下の直筆メモも載せてあります。
1937年創業当時からの顧客でした。
ベンソン&クレッグはビスポークテイラーとして、スーツやモーニング、軍服を仕立てたことがロイヤルワラントのところに書いてあります。
Royal Warrant – Benson & Clegg
陛下の素敵な写真も載っていました。
服に関するロイヤルワラントは、ほかにシャツのハウズ&カーティス がありました。
ファッションに疎いので、個々の顧客に合わせた注文仕立てのことをビスポーク(bespoke)と呼ぶとかサヴィル・ロウとか初めて知ることばかりです(『キングスマン』は映画館で見たんですが)。