ロイヤル・ウェディング
(写真引用元:The Royal Fmily)
ヨーク公がエリザベス嬢と結婚したのは1923年4月26日。
二人はウェストミンスター寺院で挙式します。
この場所ではエリザベス女王やウィリアム王子が結婚式を行っているので当たり前という感じがしますが、王子が結婚式を行ったのは500年間の歴史の中でバーティが初めてでした。
花婿は新しくなったRAFの制服を着て、花嫁は銀糸やパールで刺しゅうされたアイボリー色のシフォンのドレスです。
ノースリーブのドレスで、頭にはチュールのベールにオレンジの花輪と、いたってシンプル。
ティアラについては書かれていないのでかぶっていなかったのでしょうか?
当時の結婚式とパレードの様子。
The Queen Mother marries the future King George VI at Westminster Abbey
ユージェニー王女の結婚に合わせて王室の結婚式の伝統について書かれたページです。
ヨーク公夫妻の結婚から始まった伝統として、ウェルシュゴールドで結婚指輪を作ること、ウェストミンスター寺院の無名戦士の墓にブーケを捧げる習慣のふたつが挙げられています。
戦争で兄を亡くしたエリザベスにとって、第一次大戦の戦死者に花を捧げるのは自然な行為だったのでしょう。
披露宴はバッキンガム宮殿で1時間半にわたって行われました。
メニューはウィンザー風コンソメスープ、メアリー王妃のサーモン・シュプレーム、アルバート王子の子羊のカツレツ、ストラスモア・チキン、エリザベス公爵夫人のストロベリーといった感じ。
IWS(産業福祉協会)を通じた友人であるマクビティ&プリンスビスケット社のアレクサンダー・グラントから提供された9フィートの高さのウェディングケーキは、バーティとエリザベスがマクビティ社まで行って一緒に選んだデザインのケーキです。
また、バーティは結婚式にIWS加盟の会社を招待し、少年30人が結婚式に出席しています。
同じく作られたケーキをスライスしたものが、ロンドンや他の都市で貧しい子供たちに配られました。
名門とはいえスコットランド貴族の四女ですから、持参できる装飾品もたかが知れていたのではと思います。
次男の嫁になるエリザベスには義父の国王からはダイヤとトルコ石で飾られたティアラ(The Persian Turquoise Tiara)、ネックレス、ブローチ、イヤリング、髪飾りのセットが贈られます。
マーガレット王女がこのティアラをつけた写真がありましたが、水色のドレスとトルコ石がよく似合ってきれい。
王妃からの贈り物はサファイアとダイヤのネックレスとそれに合わせたブレスレット、指輪、ブローチ、ペンダント、皇太后からの贈り物は真珠とアメジストのネックレスです。
花婿から花嫁へはダイヤモンドと真珠のネックレスとそれに合うペンダントが、花嫁からは花婿へはプラチナと真珠の懐中時計の鎖が贈られました。
エリザベスが贈られたネックレスは、製作したガラードによって半年後にティアラに作り替えられ「ロータス・フラワー・ティアラ」になります。
最近ではケンブリッジ公夫人が中国の習首席との晩餐会でつけていました。
ヨーク公が妻に贈ったティアラで知られているのはカルティエ・ロンドンに作らせた「ヘイロウ・ティアラ」ですが、これはエドワードの退位のたった3週間前の1936年に依頼され、1944年にはリリベットの誕生日に娘に譲られ、その後、マーガレット王女やアン王女がつけています。
ウィリアム王子の結婚式の時に花嫁がかぶっていたので目にした方も多いのでは。
芸術には全く興味のなかったバーティなので、宝飾品にどの程度関わっていたのかは???
周り中、宝石だらけだったので目は肥えていたとは思いますが。
兄のプリンス・オブ・ウェールズから弟夫婦への結婚祝はラグジュアリーな自動車でした。
ハネムーンに出掛けるお二人。
バーティのはじけるような笑顔がとっても微笑ましいです。
Duke And Duchess Of York - Honeymoon (1923)
ハネムーンはポレスデン・レーシーというカントリー・ハウスで、ブログの旅行記などで写真を見ましたが、とても素敵な滞在施設です。
(画像引用元:ポレスデン・レーシー ナショナルトラスト)
https://www.nationaltrust.org.uk/polesden-lacey/features/polesden-laceys-royal-honeymoon
(画像引用元:BBC)
ポレスデン・レーシーは当時は大富豪のグレヴィル夫人の持ち物でした。
夫人はエネルギッシュな人物でしたが王室に対しては敬意と節度をもっておつき合いをしていたので、ヨーク公夫妻も親しくしていました。
グレヴィル夫人は亡くなったときに、アントワネットのネックレスを含め持っていたすべてのジュエリーをエリザベスに残しています。
ユージェニー王女がつけていた大きなエメラルドが目を引く素敵なティアラも、もとは夫人のものです。
なお社交界に顔の広いグレヴィル夫人でしたが、彼女のゲストのリストに載っていなかったのがプリンス・オブ・ウェールズであるエドワードでした。
なぜならエドワードにとっては、いつも逃げ出したがっていた退屈で伝統的な世界だったからだとブラッドフォードは書いています。
ヨーク公の結婚は英国民にとって明るい話題でしたが、タイムズ紙などは、最も待ち望まれるのは将来の国王の妻、そして未来のイギリス王妃となる結婚式である、と書いたのでした。
その期待は裏切られるのですが、そんなことは当時は誰も予想もしないことで…。